「自由への欲求が勇気を与える」『自発的隷従論』より - 「偽りの神に抗え」

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この映像のなかで引用されている文章は、
エティエンヌ・ド・ラ・ボエシの著書、
『自発的隷従論』からの引用です。

下記は、その『自発的隷従論』から引用した文章です。

自由への欲求が勇気を与える

 一方に武装した五万人、他方にも同じだけの人数を置いてみよう。そして、会戦させてみよう。一方はみずからの自立を守るために戦う自由な軍であり、他方はその自立を妨げようとする軍である。どちらが勝利を収めると推測できるだろうか。苦しみの代償としてみずからの自由の維持を望む人々と、攻撃を与えたり受けたりすることの代価として他者の隷従しか期待できない人々の、どちらがより勇敢に戦いに赴くと考えられるだろうか。
 前者には、いつも目の前に過去の生活の幸福と、未来にも同様の安楽が続くことへの期待がある。心を占めているのは、戦いが続く間みずからが耐えるべき些細なことがらよりもむしろ、彼らとその子どもたちが子々孫々永遠に耐え忍ばねばならないことがらである。それに対して後者には、みずからを奮い立たせるものとしては、ほんの少しの欲望のほかにはなにもない。そんな欲望は、危険に際してすぐに萎えてしまうものであり、傷口からたった一滴でも血が流れるや、すぐに消え去ってしまうほど冷めやすいものであろう。
 かつて、ミルティアデス、レオニダス、テミストクレスらのいとも誉れ高い戦闘があった。二千年も前に生じたものだが、つい先日の出来事であるかのように、今日なお書物と人々の記憶のうちに鮮やかである。戦いはギリシア人の益を守るためにギリシアで起こり、世のすべての人々の模範となった。この戦いにおいて、当時のギリシア人のような数に劣った人々に、力ではなく、勇気を与えたのはなんであったと思われるか。その勇気たるや、海をも埋めつくさんばかりの強力な大艦隊に抗し、大隊の隊長の数が自軍の中隊の兵員数をしのぐほど多くの民を擁する国を、うち破ったのである。かくも栄光に満ちた日々のなかで、これほどの勇気をもたらしたのは、ペルシア人に対するギリシア人の戦いというよりむしろ、支配に対する自由の、征服欲に対する自立への欲求の勝利であったと考えられまいか。

(エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ、『自発的隷従論』) (*1)

  1. (エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ(Étienne de La Boétie)、監修:西谷 修、翻訳:山上 浩嗣、「自由への欲求が勇気を与える」、『自発的隷従論』、ちくま学芸文庫、筑摩書房、2013年、16~17ページ) [↩ Back]

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