頭にひらめいたことを、ただちに手を通してかたちのあるものにし、そのアイデアを実証せずにはいられない人間。こういう人のことをホモ・ファーベルと呼ぶそうである。変な表現だが、『手の人』『モノをつくる人』というわけだ。

――本田宗一郎、『やりたいことをやれ』 (*1)

どうも、倉田です。
世界中でベストセラー本になっている、
『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』
や、
『ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』
などの著者として有名な
クリス・アンダーソン(Chris Anderson)の新刊が
発売されましたね。
題名は、
『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』
です。
この本は、
「3Dプリンター」(立体プリンター)
をはじめとする、「DTM」関連の
新しい製造技術によって起こる、
「新たな産業革命」
について書かれています。

光によって「表出」するカブトムシ、粉から「印刷」されるモンキーレンチ

ちなみに、
「3Dプリンター」というのは、
 ↓ こんなかんじの機器です。

粉から「印刷」されるモンキーレンチ
光によって「表出」するカブトムシ

なんとも、少年ハートが高鳴っちゃう映像ですよね(笑)。

「DTM」(デスクトップ・マニュファクチュアリング)ってなに?

これは、いわゆる、
DTM」(デスクトップ・マニュファクチュアリング
というやつです。
これと似たような言葉で、

「DTP」(デスクトップ・パブリッシング)
というのがありますが、こちらは、
「かつては手作業でおこなわれていた
 書籍の編集作業などをパソコンでおこなう」
というものです。
「卓上出版」と呼ばれることもあります。
で、
「DTM」(デスクトップ・マニュファクチュアリング)は、
それの製造業版というわけです。
文字通り、
「机の上でモノを製造できる」
ということですね。

エコノミスト誌と、「職造接近」と、「産業突然死」

エコノミスト誌は、
この「DTM」(デスクトップ・マニュファクチュアリング)について、
つぎのような記事を書いています。
「製造業のデジタル化は、モノの作り方を一変させ、
 雇用に関する政治のあり方をも変えるだろう。」
(英エコノミスト誌 2012年4月21日号)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35048
(以下、本文より抜粋)

 「多種少量生産の製造コストは下がっている。」
 
 「未来の工場は、マス・カスタマイゼーションを中心としたものになるだろう。」
 
 「織工の家に近いものになるかもしれない。」
 
 「コンピューター上で製品を設計し、3次元(3D)プリンターで『印刷』することが可能になっている。素材の層を連続的に重ねて立体物を作成する仕組みだ。」
 
 「いずれほぼあらゆるモノが、ほぼあらゆる場所で――自宅のガレージでもアフリカの村でも――作れるようになるかもしれない。」
 
 「設計をダウンロードし、印刷するだけでいい」
 
 「フォードが巨大なリバールージュ工場を建てた時、膨大な資金が必要だった。だが現代では、ノートパソコンと創意工夫に対する強い意欲さえあれば、ほかのものはほとんどなくても、リバールージュ工場と同等の製造の場を立ち上げることが可能なのだ。」
 
 「あらゆる革命の例に漏れず、この産業革命も、破壊的なものになるだろう。」
 
 「雇用の大半は、工場ではなく、近くのオフィスで生まれる。」
 
 「未来の製造業の仕事には、より多くのスキルが求められる。」
 
 「海外での生産が先進国に戻るケースが増えている。」
 
 「需要の変化により迅速に対応するために、顧客の近くに拠点を置くことを企業が望むようになっているためだ。」
 
 「また、製品があまりにも高機能であるために、設計者と製造者が同じ場所にいた方が都合がいいというケースもある。」
 
 「製造業とサービス業の線引きは曖昧になっている。」
 
 「大勢の起業家や職人がオンラインで設計を交換し、それを自宅で製品化し、ガレージから全世界に向けて販売する」

と、まぁ、いろいろ書かれているわけですが、
ポイントをギュッとしぼって、3つにまとめると
つぎのようなかんじです。
 ●「あらゆるモノを、あらゆる場所で作ることができるようになる」
 ●「自宅が多品種少量生産のための工場になる」
 ●「海外での生産が先進国に戻り、『職造接近』になる」
これらがこれからの社会を読み解くキーワードに
なってくるでしょう。
あと、
「あらゆる革命の例に漏れず、
 この産業革命も、破壊的なものになるだろう」

という言葉も、ゆめゆめ忘れないでくださいね。
ぼんやりしていて、気づいたときには
「産業突然死」
なんてことにならないように。

「すでに起こった未来」と、トーマス・ワトソンの見当はずれと、「水滴のルート」

とはいえ、
「誰もが必要なモノを自宅で製造するようになる」
という時代が来るなんて、
なかなか想像できないかもしれません。
無理もないことだとおもいます。
似たような話でいえば、
まだパソコンがなかった時代には誰もが、
今のように1人の人が複数のコンピューターをつかうように
なる生活を思い浮かべることができなかった、
ということとおなじです。
当時、IBMの社長だったトーマス・ワトソンは
「コンピュータにはせいぜい5台分の市場しかないだろう」
と言っていた、という話もあるくらいです。
ところがどっこい、
フタをあけてみれば、いつの間にやら
世の中はコンピューターだらけになっています。
このように、
新しい技術の登場による変化を見通すことは、
むずかしいことなのです。
「DTM」(デスクトップ・マニュファクチュアリング)
についても、これとおなじことが言えます。
今の時点で、
「もうすぐ、子どもが3Dプリンターをつかって
 自分のおもちゃを自分で製造して遊ぶ時代が来る」

と言っても、おそらくまだピンとこないでしょう。
でも、これは
「すでに起こった未来」
なのです。
「DTM」(デスクトップ・マニュファクチュアリング)が
一般家庭にまでいきわたるのが3年後になるか
5年後になるかはわかりません。
でも、最終的にそうなることはすでに決まっています。
手の甲に上から水を滴らせたとき、
その水滴がどんなルートを通って
下に流れ落ちるかはわかりませんが、
「水滴が下に流れ落ちる」ことだけは確実です。
ここで問題なのは、
「水滴がどんなルートを通るのか」ではなく、
「水滴が下に流れ落ちる」という事実なのです。

作るイケメンと、踊る「チッチャイカワイイノ」

ところで、
「クロイノ」って知ってますか?
ロボットです。
かわいいです(笑)。
「ロボット」と聞いてすぐにイメージするような
イカツイ感じはまったくありません。
ちっちゃいです。
丸いです。
そして、かわいいです(笑)。
 ↓ じっくりご覧あれ。

踊るクロイノ

このコをつくったのは、高橋智隆さんという人です。
(上の動画のなかで、マイクをもって話をしているのが高橋さんです。)
イケメンです(笑)。
彼は自宅でたった一人でこのクロイノをつくりました。
狭い部屋で掃除機などを駆使しながら
このロボットをつくりあげたそうです。
この高橋さんのように、
自宅で自分一人の力だけでも
世間を「あっ!」と驚かせるようなモノを
つくり出すことができる時代が来ています。

さあ、来るべき未来に向けて、
あなたはどんなモノをつくりますか?
どうせなら、ワクワクするモノがいいですよね。

「何かをしようっていう原動力は、いつだって、
 初めは生存に関係していて、それから社会的なものへと移り、
 最後は純粋な楽しみになる。」

(リーナス・トーバルズ、『それがぼくには楽しかったから』、13ページより)

 
 
それではまた。
ありがとうございました。
倉田幸暢
 
 


脚注
  1. (本田宗一郎、『やりたいことをやれ』、125ページより)[↩ Back]