歌川国芳、『名誉右に敵なし左甚五郎』)
歌川国芳、『名誉右に敵なし左甚五郎』(中央図)
歌川国芳、『名誉右に敵なし左甚五郎』 [1]

「ハッカー = 犯罪者」
もしも、「ハッカー(hacker)」という言葉をこのように捉えておられるとしたら、
すこしだけ時間を割いていただいて
次のハッカーに関する記述に目を通してみてください。
まずは、Paul Graham(ポール・グレアム)の著書、『ハッカーと画家』より。

え、ハッカーだって?それってコンピューターに侵入する連中のことじゃないの?うん、外部の人にとっては、ハッカーという言葉はそういう意味だ。けれどコンピューターの世界では、優れたプログラマたちが、やはり優れたプログラマのことを指してハッカーと呼ぶんだ。
この本の目的はコンピューターの世界が本当はどうなっているのかを説明するってことだから、誤解されるのを承知の上で、敢えてこの単語、私たちが実際に使っている単語を使うことにしたんだ。

(Paul Graham(ポール・グレアム) (川合史朗 訳) 『ハッカーと画家:コンピューター時代の創造者たち』、オーム社、2005年、pp.v-vi)

次は、Eric S. Raymond(エリック・レイモンド)の著書、
『ハッカーになろう (How To Become A Hacker)』より。

ハッカーを声高に名乗る別の集団が存在しますが、彼らはハッカーではありません。これはコンピュータに侵入したり、電話のただがけしたりする人々(主に男のガキ)です。本物のハッカーはこの連中を「クラッカー(cracker)」と呼び、一切関わりを持ちたくないと思っています。本物のハッカーたちはたいてい、クラッカーは怠惰で無責任であまり賢くないと思っています。車の点火回路をいじってキーなしで車を始動できても自動車エンジニアにはなれないように、セキュリティ破りができてもハッカーにはなれないよ、というのがハッカーたちの文句です。残念なことに、多くのジャーナリストや著述家たちはだまされて、クラッカーについて書くのに `ハッカー hacker'という言葉を使い続けています。真のハッカーたちはこれをとてつもなく不愉快に思っています。
基本的な違いとはすなわち:ハッカーはものをつくります。クラッカーは壊します。

(Eric S. Raymond(エリック・レイモンド) (山形浩生、村川泰、Takachin 訳) 「II. ハッカーって何?」 『ハッカーになろう (How To Become A Hacker)』)

このように、「ハッカー = 犯罪者」ではないのです。
それどころか、「ハッカー」という言葉は、
「優れたプログラマ」を意味する言葉なのです。
さらに、もっと本質的な部分を見れば、
「ハッカー」とは、コンピューター関連の分野に限らず、
あらゆる分野における「優れたつくり手」のことを意味する言葉でもあるのです。


脚注
  1. 歌川国芳、『名誉右に敵なし左甚五郎』 at Wikimedia Commons[Back ↩]