ブログやホームページを作ることができるCMSとしては、WordPress (ワードプレス)と Movable Type (ムーバブル・タイプ)が特に有名です。
そこで、ここでは、WordPress と Movable Type との違いを比較してみたいと思います。

WordPress と、その他の主要なブログプラットフォームとをGoogle Trends 上で比較したグラフ
http://www.google.com/trends?q=wordpress%2C+blogger%2C+movable+type%2C+typepad&ctab=0&geo=all&date=all

WordPress と、その他の主要なブログプラットフォームとをGoogle Trends 上で比較したグラフ
WordPress と、その他の主要なブログプラットフォームとをGoogle Trends 上で比較したグラフ

(図表の出典:Google. Google Trends: wordpress, blogger, movable type, typepad. ( http://www.google.com/trends?q=wordpress%2C+blogger%2C+movable+type%2C+typepad&ctab=0&geo=all&date=all ). )

WordPress と Movable Type の比較 一覧表

  WordPress
(ワードプレス)
Movable Type
(ムーバブル・タイプ)
ライセンス 商用でも無料で使用できます。(「GPL」オープンソース・ライセンス) 個人事業、法人、団体での利用は有償です。(一部機能を削除したMTOS(Movable Type Open Source(ムーバブル・タイプ・オープンソース))はGPLライセンスで提供されています)
サポート WordPressフォーラムによるサポート。Automattic社による、有償サポートもあります。 ライセンスを購入している場合、Six Apart(シックス・アパート社)によるサポートが受けられます。
開発言語 PHP Perl
データベース MySQL MySQL、PosgreSQL、SQLite
複数ブログの設置と管理 1つのWordPressで複数のブログを作成・管理することができます。 1つのMovable Typeで複数のブログを作成・管理することができます。
コンテンツの生成 動的生成のみ。(プラグインを使うことで、静的生成も可能。) 動的生成、静的生成、両方できます。
サイトの再構築 不要 静的生成の場合、再構築作業が必要です。
プラグイン WordPressのPlugin Directory(プラグイン・ディレクトリ)には、1万数千の無料のプラグインが登録されています。 Movable Type Plugins and Themes Directory(プラグイン・アンド・テーマ・ディレクトリ)に登録されているプラグインは数百程度。
テーマ WordPressのFree Themes Directory(フリー・テーマ・ディレクトリ)には、千数百の無料のブログ用テーマ・ブログ付きウェブサイト用テーマが登録されています。 各サイトにて配布されているため、数は不明。Movable Type Plugins and Themes Directory(プラグイン・アンド・テーマ・ディレクトリ)に登録されているブログ用テーマは数個。
別のシステムからのインポート インポートするデータの形式は、「Movable Type と TypePad」「Blogger」「RSS」「LiveJournal」「WordPress」などから選択することができます。そのほか、プラグインを使って、インポート機能を拡張することができます。 インポートするデータの形式は、「Movable Type」「WordPressXtended RSS(WXR)」「他のシステム(Movable Type形式)」から選択することができます。

(参考資料:山本高樹「WordPress と Movable Type の比較」、「WordPressを選ぶ理由:気軽に使えるのに奥が深い、期待のblogツールの魅力を探る」、毎日コミュニケーションズ、『Web Designing』、2009年7月号、p.94)

開発言語や使用できるデータベースの種類など、両者には明確に異なる部分がある一方で、Movable TypeがGPLライセンス版の「MTOS」をリリースし、WordPressは有償サポートを開始するなど、ここ数年で違いがなくなりつつある部分も増えている。
 もっともよく取り上げられる両者の違いの一つに生成するコンテンツが静的か動的かという点があるが、その部分だけでは一概に特定の用途への向き不向きを判断できない場合も多い。実際に海外では、高負荷がかかる大規模なサイトがWordPressで問題なく運営されている例も少なくないからだ。

(出典:前掲書、p.94)

世界的に見ると圧倒的なシェアを誇るWordPressには、それゆえに享受できるメリットがたくさんある。たとえば、無料で公開されているプラグインやテーマの種類は、Movable Typeとは比較にならないほど多い。また、昨年頃からのWordPress自体の急激な進化の具合には目を見張るものがある。もともと簡単だった操作がさらに改良され、管理画面のインターフェイスデザインなどもより使いやすいように洗練されてきており、ストレスを感じることなく操作することができるのだ。
(中略)
あくまで感覚的なことではあるが、たとえMovable Typeでその速度が劇的に改善される可能性があったとしても、「再構築」という作業があるかないかという点は、ユーザーによっては決定的な差となっているようだ。

(出典:前掲書、p.94)

ユーザーや関係者を重視する WordPress と、ユーザーや関係者を軽視する Movable Type

Movable Typeはかつて、ブログソフトウェアとしての頂点を極めていました。
それが、今ではWordPressに大きく差をつけられています。
このようにMovable Typeが没落した背景には、いったいなにがあったのでしょうか?
Movable Typeに関わったことのある人の話を聞いていると、どうやら、Movable Type の開発元であるシックス・アパート社に、ユーザーや関係者を軽視する企業体質があったからというのが、原因のようです。
たとえば、無料で利用していたユーザーから強制的にお金を徴収するようにしたり、Movable Type を普及させてくれる存在であるパートナー企業を軽視したりしていたようです。

(参考サイト)
Movable Type が WordPress に負けた本当の理由
Movable Type 4発表で改めて感じるシックス・アパート社への不信

僕自身、Movable Type はほんの少ししか使ったことがないので、Movable Typeについて僕が言えることはありません。
しかし、上記の参考サイトのような意見を聞いている限り、Movable Type の開発元であるシックス・アパート社は、少なくとも数年前には、ユーザーや販売パートナーなどの関係者を軽視する体質があったようです。
一方、WordPressはユーザーや関係者を非常に重視しています。
それを示す例としては、たとえば、新しいバージョンの管理画面のデザインを決めるときに、デザイナーがデザインを決めるのではなく、コミュニティで投票をおこなって最終的なデザインを決定するという方法をとっています。

たとえば、バージョン2.5で管理パネルのデザインを変更した際、コミュニティでの反応が賛否両論だったため、第三者機関に委託してユーザビリティテストが実施された。そして、バージョン2.7では、そのテストの結果がしっかりと反映されているのだ。また、バージョン2.7のリリース前には、世界中のデザイナーに対して管理画面のアイコンのデザインを募集し、コミュニティで投票を行って最終的なデザインを決定している。

(出典:山本高樹「WordPress創始者 Matt Mullenweg 氏インタビュー」、「WordPressを選ぶ理由:気軽に使えるのに奥が深い、期待のblogツールの魅力を探る」、毎日コミュニケーションズ、『Web Designing』、2009年7月号、p.93)

この事例も、WordPressの開発においては、開発者だけでなく、実際にWordPressを利用するユーザーの声が重視されている、ということを表しています。
また、WordPressの創始者である Matt Mullenweg (マット・マレンウェッグ) さんは、インタビューでWordPressが人々に支持されている理由についてたずねられて、次のように答えています。

世界中のさまざまな人々がコミュニティに参加してくれたことで、プラグインやテーマがさらに充実し、プラットフォーム自体がとても魅力的になりました。それが今、WordPressが人々に受け入れられている理由だと思います。

(出典:前掲書、p.91)

この発言をみるだけでも、WordPressが、先ほどのMovable Type の関係者を軽視する姿勢とは正反対の性質を持っていることが分かります。
また、同じインタビューで、WordPressの今後の目標についてたずねられた Matt (マット) さんは、次のように答えています。

ユーザーの声をしっかりと聞くことができる体制を作り、今、何が必要なのかを知り、迅速に対応できるようにコミュニティをさらに整備していきたいと思っています。WordPressはユーザーのコミュニティが育てていくツールですから。

(出典:前掲書、p.91)

これらの創始者の発言にも現れているように、WordPressはユーザーや関係者を非常に重視しているのです。

WordPress の問題点

もちろん、「WordPress(ワードプレス)」にも問題点はあります。
それについては、下記のページでご紹介しています。
WordPressの欠点

Movable Type の問題点

Movable Type を使わないほうがいいとは言いません。
Movable Type にも優れたところがあります。
しかし、Movable Type には、WordPressと比べて、決定的な問題点があります。
その問題点とは、「世界で一番使われているブログソフトウェアではない」ということです。
いまや、世界的には WordPress のほうが圧倒的に人気があります。
インターネットというのは、ある意味、「一人勝ちの世界」です。
ある分野においては、1位やごく少数の上位陣だけがアクセス数や人気を独占する、という現象がインターネット上では起こります。
ウェブサイトや、商品・サービスでも、アクセス数や人気が1位のものは、数が数を呼んでどんどん人気が高まっていく傾向にあります。
ですがその一方で、1位やごく少数の上位陣以外は、アクセス数や人気が集まらなくなります。
そのため、極端に言えば、圧倒的な1位がいて、そのずっと後方に2位以下が続く、という構図になります。
これは、Google と Yahoo! によって2分されている検索エンジン市場を見ても明らかでしょう。
そして、この「一人勝ちの法則」は、ブログソフトウェアの分野にも当てはまります。
つまり、1位の WordPress に世界的な人気や、お金、人材がどんどん集まっていき、開発や改良が活発になっていく、ということです。
そして、機能がより充実していき、さらに人気や、お金、人材が集まるという好循環が起こることになります。
ですが、その一方で、2位の Movable Type は、WordPressに比べて活発に開発されなくなっていくでしょう。
そうすると、開発が遅くなり、プラグインも増えず、機能が増えなくなってしまいます。
そうなると、改良や新機能の追加が遅れていくので、人気がなくなっていき、さらに悪循環に陥ってしまいまうでしょう。
正のスパイラルに乗っている WordPress と、負のスパイラルに陥っていく Movable Type 。
こうした状況があるということも、Movable Type よりも WordPress をおすすめしている理由のひとつなのです。

「情報発信基地を選ぶ」という視点

ウェブサイトをつくる際に利用されるCMSソフトウェアが、情報発信の総合プラットフォームとして多機能化している現在においては、
「ブログをやるなら、WordPressか、Movable Typeか」という議論よりも、
むしろ、多機能なプラットフォームとなるCMSのなかから、いかに自分の目的にあったCMSを選ぶのか、という問題のほうがより重要になってきています。
ですから、「WordPress(ワードプレス)」以外の選択肢として候補にあげるのであれば、Movable Typeなどのいわゆる「ブログソフトウェア」について検討するというよりも、むしろ、「Drupal(ドルーパル)」や、「Joomla(ジュームラ)」などの、大規模な多機能ポータルサイトをつくることができるソフトウェアについて比較検討した方が、よりふさわしいといえます。
つまり、現在では、「WordPress(ワードプレス)」は、総合的な情報発信基地として捉えるべきものになっている、ということです。
なので、「WordPress(ワードプレス)」と同列に語られるべきソフトウェアは、いまや、「Drupal(ドルーパル)」や、「Joomla(ジュームラ)」などの、大規模ポータルサイトをつくるためのソフトウェアになりつつあります。
実際、海外で実施されている、CMSを比較したコンテストなどの結果を見ても、人気のあるCMSのランキングの上位3つは、だいたい、「WordPress(ワードプレス)」か、「Drupal(ドルーパル)」か、「Joomla(ジュームラ)」か、といった感じになっています。
これら、「WordPress(ワードプレス)」、「Drupal(ドルーパル)」、「Joomla(ジュームラ)」の3つのCMSは、現在、「世界3大CMS」と呼ばれています。
このランキング結果からも分かるとおり、現在では、「ブログソフトウェア」というカテゴリーだけではなくて、もっと包括的に、「インターネット上で情報発信をするための総合的なプラットフォームを選択する」という観点から、自分が使用するCMS、つまり、ソフトウェアやシステムを選ぶ必要があるということです。
そして、あなたがその選択をするとき、「WordPress(ワードプレス)」は、たくさんある候補のなかでも、とくに有力な候補のひとつなのです。